音楽ライフコーチングの高野(コウノ)です。
良い人であればあるほど、相手のためになることをしてあげたくなるものです。
自分が気づいていて相手が気づいていないことがあれば指摘してあげたくなりますし、自分が知っていて相手が知らないことがあれば教えてあげたくなるものです。
ですが、人間の心理的な性質に「プッシュ・プッシュバック」という性質があります。
これは、押されれば押されるほど跳ね返そうとする性質であり、外側から何かを強制されるように感じるほど拒絶しようとする性質です。
例えば、今まさに勉強しようと思っていた所に、親から「勉強しなさい」と言われて急にやる気がなくなるとか(笑)
突然、しつこい営業や勧誘をされると、内容はともあれ、とにかく断りたくなったり(笑)
どんなに正しいことであっても、どんなに良いものであっても、一方的に押しつけられると拒絶心が生まれてしまうのです。
良い悪いは別として、私たち人間は少なからずそうした心理的性質を持っているということです。
音楽指導においても、プッシュを働かせ過ぎると逆効果になります。
「こうした方が良い」「こうすべきだ」と言った指示や指摘が押しつけがましかったり、しつこかったりすると、プッシュバックを生んでしまいます。
教える相手が、表面的には「はい」などと返事をしていたとしても、心の内では実行したくなくなっているかもしれません。
その指示や指摘が、相手の望みに沿っていて、相手との間に強い信頼関係が築かれているなら、受け入れてもらいやすいかもしれませんが、
プッシュを働かせ過ぎると、相手は強制感を感じながら行動することになり、本来のパフォーマンスを発揮することができなくなります。
脳は、自分が心から望まず、外側から強制されるような「have to」の行動を回避する方向に働いてしまうからです。
コーチング的なアプローチでは、指示や命令をするのではなく、相手に自分で気づいてもらい、何をするかも相手に選んでもらいます。
本人が決め、本人が選ぶことであれば、プッシュバックは働きません。
自分で気づくからエフィカシーが上がり、自分で決めるからエネルギーが出るのです。
生徒に足りない知識があるなら、いくつかの選択肢を提示してあげた上で、選んでもらえば良いでしょう。
単に、正しいことを伝えれば、相手がその通りに行動するわけではありません。
人間には心がありますので、機械のように正しい命令をすれば、その通りに動くわけではありません。
その心を、どのように扱うのか?
楽器を演奏するのであれば、骨格や筋肉など身体の仕組みや性質についてよく知る必要があります。
身体の仕組みや性質に反して無理なことをすれば、かえって上達を妨げてしまうからです。
同じように、指導者は人間のマインド(脳と心)の仕組みや性質についても洞察を深める必要があります。
マインド(脳と心)の仕組みに反して指導をすれば、逆効果になってしまうからです。
本当に「相手のためだ」と思うのであれば、しつこく言い過ぎないことです。
相手の価値観、相手の判断、相手のタイミングを尊重し、見守ってあげることも大切なことです。
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